多摩川を愛でる人々 インタビュー:子どもたちを巻き込んで町おこし!奥多摩町初の男性保育士「かん先生」

今回、お話を伺うのは多摩川が流れ始める「はじまりの場所」小河内・奥多摩で町おこしを行うOgouchi Banban Company(OBC)の島崎さん。
島崎さんは奥多摩湖の湖畔で生まれ育ち、奥多摩町初の男性保育士として働く一方、町おこし団体のOBCではパフォーマーとして活躍。地域の子どもたちを巻き込んだ「子ども参加型まちおこしエンターテイメント」という新しい「町おこし」を生み出し、歌って踊って町を盛り上げています。(聞き手:古畑健太郎)

島崎 勘 Kan Shimazaki
パフォーマー/保育士
1982年生まれ、奥多摩町留浦出身・在住。通称「かん先生」。
東京最西端の保育園、氷川保育園で働く、奥多摩町初で唯一の男性保育士。
OBCでは「地域振興型保育士」、「子ども参加型まちおこしエンターテイメント」というニュージャンルを掲げ、子どもたちと共に歌って踊って町を盛り上げている

Ogouchi Banban Company(OBC)とは

東京都最西端、奥多摩町小河内から町全体を、さらには西多摩全体を盛り上げ、奥多摩の名を全国に発信するために活動しているまちおこし団体。
2014年、旧小河内小・中学校卒業生が呼びかけ、同地区に移住した人々も一緒になって結成。
現在では奥多摩の外に暮らすメンバーも加わり活動がより深化している。

かん先生との出逢い

かん先生のことを知ったのは今から3年ほど前。調布のとあるイベントに出店したとき。そこで多摩川グッズを見に来てくれたお客さんが、ポツリと「奥多摩の方で子どもたちを巻き込んだヤバい人たちがいるのを知っていますか?」と言ったのだ。

そのヤバい人たちの名はOgouchi Banban Company(OBC)

思わず、「お、小河内バンバン?!・・・カンパニー?ですか・・・?」と聞き返してしまった。一度聞いたら忘れないネーミング。その場でググってみると、奥多摩湖を背景に、子どもたちが奥多摩のオリジナルソングに合わせて、いきいきとダンスしている映像が目に飛び込んできた。

そして、子どもたちの中心にいたのが、パフォーマーの島崎 勘さん、通称「かん先生」だった。

色々調べていくと僕はすぐにOBCの虜になってしまった。この人たちは確かにヤバい。多摩川のずっと上流の方にこんな面白い人達がいるんだと。しかし、引っ込み思案な僕は直接かん先生に連絡するようなことはできず、ただ一方的に「会ってみたいな」とブログに書くだけで終わった。

その後、なんとかん先生からFacebook経由でメッセージが。

嬉しくて、思わず妻に「OBCのかん先生からメッセージが来ちゃったよ!」と叫んだのを覚えている。

その後、奥多摩で一緒にお酒を飲んだり、OBCが主催するイベントに参加させて頂く中で楽しい関係を築くことができ、そして色々な人たちを紹介してもらえて、気づけばそれまでよりずっと奥多摩が身近な存在になった。

前置きが少し長くなったが、多摩川を愛でる人々を取り上げていくこの企画において、まずは多摩川の「はじまりの場所」である小河内・奥多摩で町おこしを行うかん先生に是非話を伺いたいと思いオファーしたところ、ありがたいことに快諾頂けたので今回のインタビューが実現した。

奥多摩の自然や、町おこしのことはもちろん、地域の保育論や町おこしにおけるSNS活用のスタンスなど、興味深いお話をたくさん聞けたので最後まで読んで頂けると嬉しい。では、舞台は東京・奥多摩の日原川からスタート。

はじまり、はじまり〜〜〜!

小河内で過ごした幼少期のこと

ーかん先生、こんにちは。多摩川はまだ昨年の台風で水が濁っているそうですが、ここ日原川は美しいですね。あちらこちらに倒木があって爪痕はありますけど。OBCのSNSを見ていると美しい奥多摩湖や渓流、野生動物の写真を目にしますが、やはり奥多摩の自然には特別な想いなどあるんでしょうか。

奥多摩湖の湖畔で生まれ育って毎日同じ景色を見てたから、小さい頃は何も感じなかったけど大学進学のときに外に出た後から、奥多摩の自然の魅力を感じるようになりましたね。
車の免許を取って実家に帰ったとき。それはたまたま秋だったんだけど、「小河内の紅葉ってこんなにきれいだったんだ」って。

あんまりそういう自然の美しさなんて考えたことなんてなかったけど、保育士として働いたり、OBCとして活動するようになってから『子どもたちがこれを見たら喜ぶかな』とか考えるようにもなりました。
ちょっとした景色の変化にも敏感になったね。

小学校の頃は、一人で奥多摩湖の湖畔に出かけて遊んでいました。
肩を痛めるくらい水切りしたり、木の棒で草花を切りつけて『いかに一発できれいに切れるか』みたいな遊びをしていましたよ笑。

昔、湖に浮かぶ浮橋は木でできていたんだけど、釣り人たちが湖畔に同じような物を勝手に作っていて笑、よくそこに登って遊んでいました。

…ある日、そこから湖に落ちてしまい釣り人に助けられたことも笑。

僕は特に釣りとかもしていなかったけど、兄ちゃんは、魚群にギャング針を投げてひっかけて捕まえていたな…ひどいよね笑

大人になってからは、留浦(とずら)の浮橋に行って仕事終わりに缶ビールを飲むのが好きでしたね。最近は家が離れたから行っていないけど。

実は奥多摩湖って湖畔に降りれるところが少ないんです。留浦はちょっと遊べるくらい広い場所もあるんですよね。

ーたしかに、一度故郷を離れると今まで当たり前だった景色が別の視点から見えますよね。留浦の浮橋、一度だけ行ったことがあるんですが、湖畔の景色は本当に美しいなと思いました。

奥多摩の園児たち・奥多摩ならではの保育

ーかん先生が勤めている氷川保育園のブログを見ていると、園児たちが日常的に奥多摩の自然と触れ合っている写真が印象的でした。大きな岩によじ登っていたり吊り橋を渡っていたり。これは都心部の保育園ではなかなか味わえない体験ですよね。

氷川のお散歩ですね。夏場は多摩川と日原川の合流地点によく連れていきます。流れがなくて安全なのでみんなで裸足になって川で遊びます。
もちろん保育園にはプールもあるんですが、昨年はプールに入るほどの暑さがなくて、河原に行ってちゃぽちゃぽするくらいが丁度よい日が多かったかな。

子どもたちにはなるべく四季を味あわせてあげたくて、よく外に連れていきます。
春は桜が見える場所、新緑がきれいな場所へ。夏はちょっと河原におりて、秋は紅葉。冬は日差しの暖かさと日陰の寒さを感じられる場所へ。

都会の保育園では「子どもの、こういうところを伸ばしたい」と先生たちが考えて、園内に遊具を設置して…というふうに環境そのものを一から考える必要があるんだけど、奥多摩だと散歩にちょっと行くだけでそれができちゃう。苦労して考えなくても良いんです。あとは都心部のように公園の奪い合いになることもないし。
そこは奥多摩の保育園の利点だなと思いますね。

あと、これは他の保育業者の方から聞いたんだけど、もともと子どもの遊具は自然物を模倣して作られているらしいですよ。

ーそうか、奥多摩の大自然そのものが遊具ということですね。うちの子も外遊びが好きなのでよく多摩川に連れていきます。うちの近所の多摩川はちょっと淀んでいる場所があったり、危なそうなゴミとかがあるのでこんな自然に囲まれた環境は正直羨ましいです。

そうそう、園児たちの話で思い出しましたけど、荒澤屋(※)さんの赤べこで飲んでいたら、お客さんに「うちの子はみんなかん先生にみてもらった。かん先生なら安心だよ。」というような口コミ情報を複数得ました。僕自身、今絶賛子育て中でして、もちろん育児と保育って別物だと思うんですが、かん先生が子どもたちとどう向き合っているのか是非聞きたいです。

※荒澤屋
囲炉裏を囲んで昔話が聞ける宿。1階に「炉ばた 赤べこ」という隠れ居酒屋があり、地元客はもちろん観光客で賑わう。奥多摩に行く際には必ず泊まる良いお宿

いや、安心じゃないですよ笑。

まあ、でも、もしかしたら、保育園の外でも保育園と中と変わらず子どもたちに接しているから、そういう意味で「安心」と思ってくれるのかな。
保育士って一般的にプライベートで親御さんに出会うとハッとしちゃう傾向があると思うんですよ。休みの日に園児に会うと「あああ・・・!」みたいな。
でも僕は全くそういう思いはなくて、例えば休みの日とか、飲み屋で飲んでるときとかに会っても、むしろ嬉しくて逆に声かけちゃう。
地域に根ざす保育園の特徴なのかもしれないですね。自分も地域の一員としての保育士だと思っているので。

…で、なんでしたっけ?

ーあ、そんなかん先生が普段、子どもたちにどう向き合っているかを是非伺いたいです。

どう向き合っているか・・・ね。
難しいな〜。

かん先生の保育論

新メンバーの菊池さんとやってるnoteでは保育士のこともたまに書いているけど、あまり普段話をすることはないからね。

保育士を始める前、学生の頃の話になりますが、当時の僕は「優しい人間になりたい」という漠然とした目標が強くあったんです。
でも、人に「やさしく」しようしよう、と思っていたら、ある時疲れちゃって、それをやめることに。
なぜやめたかというと、『本当にやさしい人間は、「やさしく」しようなんて意識しないで、「やさしく」することができるんじゃないか』ということに気づいたから。

でも、やめた後・・・僕の周りから多くの人がいなくなりました笑

ーはははは笑。

その後、保育園で働こうと思っている時期に図書館で保育書を読み漁っていたんですが、 「自分がやさしいことをしていることに気づかない状態が子どもにはある。でも、それを大人が褒めて継続させるのは違う。」というような一節に出会ったんです。
それは子どもが持つ、純粋なやさしさ。やさしくしなきゃなんてことを考えることもせず、悲しんでいる子に自然と寄り添うこと。
子どもって誰も見ていないのに「やさしい」ことをしていることがあるんです。無意識のうちに。

でも大人がそれを見つけて、「これはいいことだ。続けさせよう。」というのは違う、と。
それが、当時自分の思っていることとリンクしたんです。

もちろん、褒めていくことで相手が伸びていくことも分かりますよ。だから、子どもたちとは、そのバランスを大事にして向き合っていますね。褒めて伸ばすみたいなことだけじゃないからさ。承認欲求にとらわれる生き方って、いろいろ辛そうじゃない?自分で自分の価値を見いだせるようになれたらその子もハッピーなんじゃないかと思ってね。

ー…すごく深くて興味深いお話ありがとうございます。僕自身、一人の父親として勉強になります。

多摩川の「はじまりの場所」小河内・奥多摩で活動するかん先生とのお話。いかがでしたでしょうか。次回は唯一無二の町おこしや、独自の視点でのSNS活用など、OBCの具体的な活動に迫ります。お楽しみに!

話の中に登場した場所

留浦の浮橋

民話の宿 旅館荒澤屋