10月に上陸した台風21号は日本各地で大雨や暴風を撒き散らした。
全国の農林水産業の推定被害額は108億円、建物の被害もあったが、衝撃的だったのが全国の洪水・浸水被害である。
大阪・奈良の大和川、和歌山の貴志川、三重県の宇陀川などが氾濫し、住宅地が浸水。
当日は衆議院議員選挙の投開票日ということもあり、メディアは「選挙」と「台風」の速報を平行して報道しているような感じだったのだが、
不思議な事に各地の河川の水位が急上昇していることをリアルタイムで報道している局がほとんど無かった。
多摩川も氾濫まではいかなかったが、数年ぶりに危険水位まで上昇し、普段は穏やかな河川敷の様相をがらっと変えてしまった。
↑写真は翌日の多摩川。
外来種がたくさん潜む川でもあるので、普段「タマゾン川」などと揶揄されるが、この日の多摩川は明らかにアマゾン川そのものだった。
では、台風の大増水から2週間あまり経過した多摩川河川敷の様子を簡単に紹介したいと思う。
多摩水道橋と狛江の五本松の間付近。狛江高校の前あたりの多摩川。
台風前には草木が生い茂っていたが、増水した濁流によって下流方向になぎ倒されてしまった。
↑中流域で浸水した河川敷は、だいたいこんな感じで草木が倒れている。
小田急線の高架下にこんなものを見つけた。
上流から流れ着いた巨大な木の根が並べられている。
ぱっと見てすごい惹きつけられてしまった。
まるで「多摩川決壊の碑」のような、訪れる人に警鐘を鳴らしているモニュメントのようだ。
そう、ここは1974年9月に多摩川の堤防が決壊し、住宅を流出させた大水害のあった場所でもある。
↑和泉多摩川緑地公園。
まだ濁流が運んできた草木がそこらじゅうに残っている。
台風の爪痕はあるものの、公園には家族連れやカップルなどが戻ってきた。
(直後は地面がぬかるんで、ピクニックなんてできる感じじゃなかった)
やっと落ち着いた宿河原堰。
増水した翌日は堰の本体が見えないくらいの濁流だった。
数年前から、多摩川をほぼ毎日観察していた私にとって、この大増水はとてもショッキングだった。
最近読んだ、梅原真さんの本の中にあった言葉を思い出す。
四万十川が増水してしまうと、「沈下橋」は水に隠れてしまうのだが、梅原さんはその光景が
『人間もこれくらいでいいんだよ』
ということを伝えてくれると言うのだ。
今日多摩川を歩いてみて、その通りだと私も思った。