多摩川の復活に賭けた男の物語『いのちの川』に心を熱くされて

多摩川系書籍のブックレビューです。

今回ご紹介するのは、淡水魚類・魚道研究家の山崎充哲氏の著書『いのちの川―魚が消えた「多摩川」の復活に賭けた男』。

いのちの川―魚が消えた「多摩川」の復活に賭けた男

多摩川は一時「死の川」と呼ばれるほど、生活排水や工業排水で汚れていました。

昭和30年以前は、源流から流れ注ぐ冷たい水、鮎の遡上など、夏は当たり前のように海水浴が楽しめたのですが、

高度成長期の経済発展の代償として、70年代には生活排水のブクブクの泡でとてもそのような場所ではなくなってしまいます。

その後、下水処理施設の整備などでなんとか水質改善されるものの、一旦「死の川」となってしまった多摩川は、その存在自体を人々から忘れ去られてしまう。

こうして多摩川は環境的な意味での「死」に加え、人々の意識から外れてしまうという、もう一つの「死」を迎えることになります。

もう一度、あの頃の多摩川に戻したい、と一人奮闘したのが著者の山崎さん。

多摩川に食べられる天然鮎を戻すための活動や、移動水族館や川の自然教室の開催、「川の駅構想」など、

人々の目を再び多摩川へと向けるために、ときに自治体や河川団体とぶつかりながらも強い意思を貫いて行動をしていきます。

読み進めていると要所要所で、『えっ、そうだったの?!』と思わず声を出したくなるような情報も。

例えば、

  • 登戸にある二ヶ領堰は現在堰としての本来の機能をしておらず、遡上する魚にとっての障害でしかない。
  • 多摩川源流の水はすべて荒川水系に注がれている。

など。

普段、登戸の堰を見ると「今日も綺麗だなぁ」なんてのんきに思っていましたが、いかに自分が何も知らないのかを知りました・・・。

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山崎さんは、大学卒業後、関西の釣りメーカーに就職するものの退職し、地元に再び戻ってきます。

ここから意外なのが、自分で年賀状の事業を立ち上げて独立してしまうということ(予想外の展開にびっくり)。

当時まだ珍しかった名前と挨拶文入りの年賀状販売を行いますが、これが大ヒット。

物事を考える柔軟さ、視野がとても広い方だからこそ、多摩川の復活を仕掛けるプロデューサーとして、活躍されているのだなと感じました。

今、当たり前のように美しい多摩川を眺めることができるのは、間違いなく山崎さんのおかげですし、今後もっと良くするために現在進行形で奮闘し続ける姿勢に感服しました。

同時に、自分にももっとできることがあるはず!なんとかしたい、と心を熱くさせるものがありました。

多摩川を愛する全ての人に読んでいただきたい1冊です。

いのちの川―魚が消えた「多摩川」の復活に賭けた男
山崎 充哲
幻冬舎
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